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糖尿病地域医療連携におけるICTへの期待


徳島大学先端酵素学研究所 糖尿病臨床・研究開発センター センター長 松久 宗英 先生によるプレゼンテーションになります。

【目次】
00:12~ 糖尿病地域保健・医療連携の現状
02:59~ 各疾患に対する適用と今後
04:00~ 糖尿病診療のこれから・ICTとPHRの活用
06:40~ ICTの今後の展望と課題

【概要文】
他職種の連携は、「糖尿病連携手帳」という日本糖尿病協会が発行している手帳を介して行われています。
紙媒体の手帳を積極的に利用することで、かかりつけ医・専門医・コメディカル・保健師が同じ情報を共有することに努めています。
ただし、日夜更新されるデータを全て紙媒体に記録することは、書く人の努力に大きく依存します。特に多数の患者を抱えるかかりつけ医の労力が大きいことが課題です。
この点を改善するべく、手帳データをデジタル化し、医療機関同士で連携することが推進されてきました。
徳島県では、医療連携基盤「阿波あいネット」が立ち上げられています。まだ稼働したばかりで十二分に活用されているわけではありませんが、異なる企業の提供する異なる電子カルテ情報を集約化する試みが行われています。
電子カルテの普及は依然として大病院に限定されており、街の診療所では紙カルテのまま、という場合も多いのが現状です。そこで、紙カルテの検査結果やレセプト情報(保険診療の内容)を、一定のサーバーに一元化してデジタル化することで、電子カルテからかかりつけ医における情報を一覧できるようなシステムを構築しています。

平成23年頃から、ICTネットワーク「糖尿病克服ネットワーク」が有志医師によって立ち上げられました。
最近では、街の多くの医師から「糖尿病だけでなく他の疾患に対しても利用できるようなネットワークがほしい」との声があり、他疾患で利用できるICTネットワークの構築を進めています。

ICTネットワークを推進していく中で、糖尿病診療においては「情報が連携した後にどうするか」という点に注目するべきだと考えています。特に「患者さん自身に医療データを保持してもらう」ということは重要でしょう。
スマートフォンなどを用いて記録した「Personal Health Record(PHR)」と、電子カルテなどの医療情報を付き合わせて、患者さん自身がどちらの情報にもアクセスでき、医療機関同士でもその情報を活用して診療に生かすといった利用の仕方が期待されています。海外ではすでに保険診療の中でPHRデバイスが活用されています。

今後、ICTを医療において活用する中で、最も重要だと考えられるのが「リスクの可視化」です。今までの臨床研究の結果から、一定の情報を入力することで、今後のリスクを弾き出すアルゴリズムが作成されています。
医師側には「今後、どのような選択をすれば、どの程度病状が悪化・改善するのか」といったデータがあります。
それを患者さんにも分かりやすいように可視化することは、良い医療を作っていく上で非常に重要でしょう。

また地域医療では、オンライン診療の活用が叫ばれています。医師の派遣が難しい地域において、オンライン診療とICTを活用することで、患者さんの病状改善、QOL上昇に繋がることが期待されています。

現在のところ、PHRの診療上の利用、遠隔での栄養指導は、保険診療で認められていません。しかし、研究中では、その利便性や有用性が確認されており、研究に参加した患者さんからも好評です。
医療情報というレベルの高い個人情報を安全に扱う方法や、社会的な空気の醸成を慎重に見極めながら、社会的・法的なハードルを超えて、より一般的にICTが利用できるようになればと思います。