睡眠覚醒の謎に挑む -Part1-

動画が正常に表示されない場合、推奨環境をご確認ください。

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 WPI-ⅢS 機構長 柳沢正史先生による「睡眠覚醒の謎に挑む」のプレゼンテーションのPart1です。

【目次】
0:11~イントロダクション
5:29~睡眠負債による影響


睡眠は外界刺激に対するパフォーマンスが落ちる現象であるにも関わらず、多くの生物は睡眠を必要とします。
その一方で「なぜ睡眠が必要なのか」という疑問は解明されていません。さらに、睡眠の調節や睡眠障害による疾患への影響なども謎のままです。
今回のプレゼンテーションでは、これらの謎の解明の一助となる研究について、柳沢先生に解説していただきました。
睡眠負債の影響や睡眠欲求の正体、睡眠覚醒のスイッチングの話題を中心にお話ししてくださいます。

睡眠不足は、酩酊状態と同程度まで脳のパフォーマンスを低下させることがわかっています。ほかにも、睡眠負債による経済的損失、睡眠負債を返済するのに要する日数、疾患への影響なども報告されています。

また、眠気は恒常性と体内時計による制御を受けます。
さらに体内時計は、眼に入る光とメラトニンの作用で制御され、これらの影響を調節することで、睡眠のリズムを整えられるとのことです。

一方、私たちは、非常時などには一瞬で眠気が覚めます。このメカニズムには、脳の報酬系が関与していることが解明されてきました。
脳の側坐核Nucleus accumbens(NAc)の細胞の一部には、アデノシンレセプターのA2ARが発現しています。アデノシンは睡眠を促進します。
そこに、強いモチベーションなどで腹側被蓋野VTAが刺激されると、ドーパミンが分泌されNAcを刺激します。この報酬系のドーパミン神経系回路により、眠気が覚めるのです。

睡眠のスイッチングは、オレキシンという脳内物質が司っています。
オレキシンは、視床下部外側野で産生される脳内物質で、オレキシンが欠乏すると覚醒からいきなりレム睡眠に移行することがわかっています。
脳内には覚醒と睡眠を司る神経回路が存在し、相互抑制することで覚醒と睡眠のスイッチングを行っています。オレキシンはこの回路の中心的な作用を担っています。
このオレキシンの受容体を標的とした拮抗薬を創ることで、自然な睡眠を惹起する睡眠薬が開発されています。

数時間単位で生じる睡眠要求の蓄積と数秒単位で生じる睡眠覚醒スイッチの関連については、まだ十分に解明されていません。眠気のもとや眠気の受け皿の正体、眠気が蓄積された後睡眠スイッチをオンにする伝達経路などの解明が期待されています。
柳沢先生らは、シナプスで機能するタンパク質群のリン酸化が眠気の本体の一角ではないかと提唱しているところです。

Part1では、イントロダクションに加え、睡眠負債による影響について解説していただきました。
近年注目されている睡眠負債ですが、我々の想像以上にパフォーマンスを低下させ、さらに解消には時間がかかることがわかってきました。ぜひご覧ください。