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睡眠覚醒の謎に挑む -Special edition- Part3


睡眠の研究は、20世紀初頭に始まって以来、多くの研究者たちが挑んできた分野です。
睡眠研究は多岐に渡っており、基礎的なメカニズムの解明から、社会的な視点からの研究まで、幅広い研究が行われています。
これらの研究が組み合わさることで、私たちの睡眠の実態が少しずつ解明されています。今回は、「質の高い睡眠とは何か」についてや、睡眠についての情報を伝える方法、今後の研究の展望などについて、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構・機構長の柳沢 正史先生に教えていただきました。


【質の高い睡眠とは:「暗く」「静かに」「適温に」】

質の高い睡眠を得るためには、非常に常識的なことを守ることが大切です。 つまり、「寝室を暗く」「静かに」「適温に」することです。人間は昼行性の動物ですので、確実に光は睡眠を妨げます。また、うるさい音楽や人の声は覚醒作用があります。
寝付く時にリラックス出来る音楽をかけていた方が眠りやすい人もいますが、実際のところ寝ついた後はそのような音楽も切るべきと考えられています。タイマーなどで停止させたり、フェードアウトさせると良いでしょう。
そして、その人にとって快適な温度を朝まで保つことも大切です。夏はクーラーをかけて涼しくするなど、快適な気温と湿度に維持しておくと質の高い睡眠につながります。
その他、気をつけるべき点としては、カフェインです。カフェインの影響下で眠れたとしても眠りは浅くなります。コーヒーなどカフェインを含む飲料は眠る前3-4時間以降は飲まない方が良いでしょう。
また日本人に多いいわゆる「寝酒」は控えた方が良いでしょう。エタノール自体には催眠作用があり、ある程度の量飲めば眠たくなりますが、数時間後にエタノールが分解されるとアセトアルデヒドになります。
アセトアルデヒドはむしろ覚醒作用があり、心拍数が上がります。質の高い睡眠のためには、寝酒はやめましょう。
高齢者では、昼間の活発な生活習慣をつけることが大切です。適度な運動を行い、昼寝はしないことも重要です。
基本的にヒトの大人の場合昼寝は不要で、「シエスタ」や「ナップ」などは夜の睡眠が不足している場合にのみ推奨されます。昼寝はあくまでも応急措置で、夜しっかり眠ることが理想です。


【一般生活者への情報発信:ネットメディアを上手に活用】

睡眠のことをより広く、一般の生活者へ知ってもらうため、Doctorbookのようなメディアでのインタビューを積極的に行ったり、ニコ生(ニコニコ動画)などのインターネットテレビ等で発信しています。
睡眠に関しては嘘の情報が非常に蔓延しており、正しい情報がきちんと伝わるように気を付けています。


【今後の睡眠研究:睡眠の根本の謎を解き、より良い睡眠を】
柳沢研究グループとしては、眠気の実体のメカニズムを解明するために、様々なことを行っています。睡眠研究には様々な視点があり、基礎的な視点から、社会的視点もあります。
そのようなものが組み合わさって、人々の睡眠がより良くなるというのが、究極のゴールでしょう。
そのようなゴールを見据えた上で、基礎的な、根本にある謎を解くというところに、一番の力点を置いています。