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緑内障が疑われたら ~検査・診断・治療を総ざらい~ Part3


北里大学病院 眼科 主任教授 庄司 信行先生によるプレゼンテーションPart3になります。

【目次】
00:12~ 眼圧下降療法
00:58~ 眼圧
02:20~ 主な緑内障点眼薬とその特徴
02:40~ 点眼回数とコンプライアンス(アドヒアランス)
03:01~ 点眼継続率
03:22~ 点眼モニタリングとアドヒアランス
04:09~ 緑内障のレーザー療法
04:22~ レーザー線維柱帯形成術(LTP)
05:11~ SLTは第一選択か
05:52~ マイクロパルス毛様体光凝固
06:43~ 隅角閉塞(瞳孔ブロック)の機序と治療
09:04~ レーザー虹彩切開術の合併症と別の治療選択
10:18~ 緑内障の観血的治療
10:45~ 線維柱帯切開術・トラベクロトミー
11:28~ 線維柱帯切除術と濾過胞
12:16~ チューブシャント手術
12:51~ 濾過手術の選択

【概要文】
眼圧を下げるためには、「房水産生量を減らす and/or 流出量を増やす」ことが必要です。治療法には様々な選択肢があります。

緑内障点眼薬はその作用点や機序によって多種多様です。多くの場合、複数の点眼薬を組み合わせて治療します。
近年問題となっているのが、点眼回数とアドヒアランスです。点眼を1日1~2回に抑えたケースでは9割以上が服薬指示を守れたという報告がされています。
また、緑内障と診断されて点眼治療を開始した人の点眼継続率を調べると、治療の脱落者が予想以上に多いことが判明しました。点眼モニタリングを行うと、医師の判断と患者の自己申告によるアドヒアランスに乖離があることも判明しました。点眼忘れや点眼した「つもり」が多いと、眼圧が上昇して進行するリスクも高いため、レーザー治療を検討する必要があります。

緑内障のレーザー治療には、レーザーの照射部位などによっていくつかの種類があります。この中でも最近注目されているのが、レーザー線維柱帯形成術(LTP)です。LTPには「アルゴン・レーザー・トラベクロプラスティ(ALT)」と「選択的レーザー・トラベクロプラスティ(SLT)」の2つがあります。ALTの問題点をクリアして、低侵襲かつ同等程度の効果をもたらすのがSLTです。
英国では、点眼治療からではなくSLTから行う方が、費用対効果が高いという報告がされています。
 
マイクロパルス毛様体光凝固という治療法もあります。従来の毛様体破壊術と比較すると、低侵襲で合併症が少なく、何度でも実施可能な治療法です。

従来の緑内障診療において、隅角が開放か閉塞かを考える時は「前房の深さ」で判断していました。しかし近年は、深さだけではなく水晶体の位置も考慮するべきだと考えられています。隅角閉塞(瞳孔ブロック)が生じると隅角が狭くなりますが、水晶体が前に出ているということが分かっています。
これによって、房水が前房へ流出しづらくなり、虹彩の根本にうっ滞すると、虹彩の根本が嚢胞様に拡大し、隅角が閉塞します。これによって眼圧上昇の悪循環が起こり、異常に高値な眼圧を呈するのです。
隅角閉塞に対する治療法の一つが虹彩レーザー切開です。劇的に眼圧が改善し、痛みもすぐに消失します。しかし、角膜が白く濁る合併症が生じることがあります。
これを解決する選択が、眼内レンズ挿入です。白内障手術の方法が転用されたものですが、治療機序は隅角を拡大し眼圧を下げるものであり、緑内障治療の一つです。

緑内障の観血的治療には、房水流出路再建術と濾過手術があります。房水流出路再建術は線維柱帯切開術などで、濾過手術は線維柱帯切除術などです。
線維柱帯切開術は侵襲の高い手術ですが、トラベクトームなどを用いることで組織侵襲を抑えて治療することができます。線維柱帯切除術では、濾過胞が形成されます。これは眼圧下降のために必要な経過ですが、一方で眼内炎の原因となるため、注意が必要です。
その他の緑内障手術治療として、チューブシャント手術などがあります。
濾過手術(線維柱帯切除術)は、進行例やより眼圧を下げたい時に選択されますが、結膜癒着が高度であればチューブシャント手術も選択肢の一つになります。出血や過剰濾過を避けたい時にはエクスプレスを選択します。
いずれの治療法でも、急激な眼圧下降には細心の注意を払う必要があります。