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先天性サイトメガロウイルス感染症


手稲渓仁会病院 不育症センター長 オンコロジーセンター ゲノム医療センター長 山田 秀人先生によるプレゼンテーションです。

【目次】
0:12~先天性サイトメガロウイルス感染症について
6:02~症候性の先天性感染児に対する抗ウイルス薬治療について
8:48~妊婦のサイトメガロウイルス抗体スクリーニングの有用性について
11:04~先天性サイトメガロウイルス感染が起きる因子についてと最近のレビュー
15:32~サイトメガロウイルスについてまとめ

【概要文】
先天性サイトメガロウイルス感染症はTORCH症候群の中で頻度が最も高い、新生児に障害を引き起こす感染症です。
サイトメガロウイルス感染症の多くは、幼児期に飛沫感染し、ほとんどが不顕性で潜伏感染します。感染経路としては母乳、小児の唾液と尿、輸血です。

妊婦の初感染では無症状が多く、時に感冒様症状を呈します。日本人妊婦の抗体保有率は約70%です。
先天性サイトメガロウイルス感染の症状は低出生体重、肝機能障害をはじめ多岐に渡りますが、8割は無症状で出生します。その一方で、出生時に無症状でも遅発性に難聴や精神発達異常、運動障害が出現することもあります。

先天性サイトメガロウイルス感染の診断は新生児尿中からサイトメガロウイルスの核酸検出または新生児血液中でIgM陽性によって行われます。
尿中の核酸検出法では全例の先天性サイトメガロウイルス感染検出可能です。
しかし血中IgM抗体は先天性感染児の約半数で偽陰性になります。
そのため、新生児尿中のサイトメガロウイルス核酸検出が2018年1月に保険収載されました。

症候性サイトメガロウイルス感染児では抗ウイルス薬による治療効果が報告されています。
2003年のKimberlinの報告によると、抗ウイルス薬非投与群では約7割の患者で聴力予後が悪化したのに対し、投与群では悪化が約2割に留まりました。現在は、抗ウイルス薬を6か月継続投与することで高い改善効果が期待されています。

妊婦に対するサイトメガロウイルス抗体スクリーニングは世界的に推奨されていません。
山田先生らもサイトメガロウイルス妊婦抗体スクリーニングの前向きコホート研究を行いましたが、先天性サイトメガロウイルス感染児10人のうち7人が、非初感染の母体から出生していたと報告しています。
これまで、先天性サイトメガロウイルス感染症の患者は、非初感染妊婦に比べ、初感染妊婦から出生するケースの方が頻度が高く、重症化しやすいと考えられていました。
しかし、最近の研究では非初感染の妊婦から出生する新生児と初感染妊婦から出生する新生児では、頻度も重症度も同等であると報告が複数されています。

先天性サイトメガロウイルス感染症を防ぐために、山田先生はプレゼンテーションで次の内容を提案してくださっています。
・全妊婦へのサイトメガロウイルス感染予防啓発
・妊婦へのサイトメガロウイルス抗体スクリーニング(IgG)
・妊娠期間中サイトメガロウイルスの初感染や再燃が疑われる場合は、母体の抗体検査と出生後新生児の尿中サイトメガロウイルス核酸検査
・希望に応じて新生児尿中サイトメガロウイルススクリーニング

他にも山田先生は多くの論文の内容についてご紹介してくださっています。
動画をご覧になり、最先端の新生児サイトメガロウイルス感染症に関する知見を広げていただければ幸いです。