東京医科歯科大学病院 病院長、腎泌尿器外科学 教授 藤井 靖久先生による「膀胱がんの4者併用膀胱温存療法(TeMT))のプレゼンテーションです。
【目次】
0:11~ はじめに
0:30~ 膀胱全摘除の課題
2:45~ Trimodal therapy(TMT)による膀胱温存療法
6:56~ 膀胱切除を組み込んだTetramodal therapy(TeMT)による膀胱温存療法
【概要文】
筋層浸潤膀胱がんMIBCは高齢者での発症が多い一方、根治治療が行われないケースも多い疾患です。
標準的な治療は膀胱全摘除と尿路変更とされていますが、この治療法は手術侵襲の大きさ、周術期合併症や死亡のリスク、回腸導管と新膀胱のQOLの低下などのリスクがあります。
このような理由からMIBCの高齢患者さんは膀胱全摘除の適応にはなりません。
実際に膀胱全摘除を行ったヨーロッパとオーストラリア4施設からの報告では、80歳代の111例のうち7.2%が周術期死亡に至ったとの報告がされています。
一方、年齢や健康状態に関わらず膀胱温存を望む患者さんが一定割合でいらっしゃいます。
このような背景から様々な膀胱温存療法が試され、現在は三者併用膀胱温存療法(Trimodal therapy, TMT)が最も標準的な膀胱温存療法とされています。
TMTは大まかに次の2種類に分けられます。
①Definitive preservation:腫瘍減量経尿道的切除(Maximal TUR)の後、最大量の放射線化学療法を行う
②Selective preservation:Maximal TURの後、低用量の放射線化学療法を行い、治療効果判定で完全切除が認められれば地固めとしてさらに低用量の放射線化学療法を行う
TMTと膀胱全摘で直接比較した臨床試験が現在まで行われていませんが、2017年にJCOで「患者背景因子をそろえた二群での比較(Propensity score matched analysis)では、疾患特異的生存率(disease-specific survival, DSS)はTMTと膀胱全摘除RCで差が認められなかった」と報告されています。
このような状況から、2017年に米国の AUA/ASCO/ASTRO/SUOが合同発行したガイドラインではMIBCの標準治療として術前補助化学療法(Neoaduvant chemotherapy)、根治的膀胱全摘術(Radicai cystectomy)と並んで膀胱温存(Bladder Preserving option)が記載されています。
これは事実上TMTが推奨されているということです。
しかしながら、TMTには次のような問題点もあります。
①温存した膀胱に MIBCが再発しやすい
②再発例の予後が必ずしも良好ではない
③MIBCの再発のほとんどは元々のMIBCの部位に再発する
④骨盤リンパ節への治療が不十分で、局所リンパ節への再発もたびたび見られる
TMTの問題点を改善させる治療法として、藤井先生らは4者併用膀胱温存療法(Tetramodal therapy ,TeMT)を開発・実践しておられます。
TeMTはTMTのSelective preservationをベースに、地固めとして膀胱部分切除と骨盤リンパ節郭清を行う方法です。
藤井先生らが開発したプロトコールに従い膀胱部分切除を施行した107例において、5年 MIBC 非再発生存97%、5年疾患特異生存率は93%と非常に良好な成績が得られました
さらに膀胱機能も良好に保ち、患者さんは高いQOLを維持できています。
動画ではTeMTのより詳細なプロトコールや治療成績、膀胱内膀胱外両方からのアプローチによる手術の手技ついても解説いただいています。
ぜひご覧ください。
【目次】
0:11~ はじめに
0:30~ 膀胱全摘除の課題
2:45~ Trimodal therapy(TMT)による膀胱温存療法
6:56~ 膀胱切除を組み込んだTetramodal therapy(TeMT)による膀胱温存療法
【概要文】
筋層浸潤膀胱がんMIBCは高齢者での発症が多い一方、根治治療が行われないケースも多い疾患です。
標準的な治療は膀胱全摘除と尿路変更とされていますが、この治療法は手術侵襲の大きさ、周術期合併症や死亡のリスク、回腸導管と新膀胱のQOLの低下などのリスクがあります。
このような理由からMIBCの高齢患者さんは膀胱全摘除の適応にはなりません。
実際に膀胱全摘除を行ったヨーロッパとオーストラリア4施設からの報告では、80歳代の111例のうち7.2%が周術期死亡に至ったとの報告がされています。
一方、年齢や健康状態に関わらず膀胱温存を望む患者さんが一定割合でいらっしゃいます。
このような背景から様々な膀胱温存療法が試され、現在は三者併用膀胱温存療法(Trimodal therapy, TMT)が最も標準的な膀胱温存療法とされています。
TMTは大まかに次の2種類に分けられます。
①Definitive preservation:腫瘍減量経尿道的切除(Maximal TUR)の後、最大量の放射線化学療法を行う
②Selective preservation:Maximal TURの後、低用量の放射線化学療法を行い、治療効果判定で完全切除が認められれば地固めとしてさらに低用量の放射線化学療法を行う
TMTと膀胱全摘で直接比較した臨床試験が現在まで行われていませんが、2017年にJCOで「患者背景因子をそろえた二群での比較(Propensity score matched analysis)では、疾患特異的生存率(disease-specific survival, DSS)はTMTと膀胱全摘除RCで差が認められなかった」と報告されています。
このような状況から、2017年に米国の AUA/ASCO/ASTRO/SUOが合同発行したガイドラインではMIBCの標準治療として術前補助化学療法(Neoaduvant chemotherapy)、根治的膀胱全摘術(Radicai cystectomy)と並んで膀胱温存(Bladder Preserving option)が記載されています。
これは事実上TMTが推奨されているということです。
しかしながら、TMTには次のような問題点もあります。
①温存した膀胱に MIBCが再発しやすい
②再発例の予後が必ずしも良好ではない
③MIBCの再発のほとんどは元々のMIBCの部位に再発する
④骨盤リンパ節への治療が不十分で、局所リンパ節への再発もたびたび見られる
TMTの問題点を改善させる治療法として、藤井先生らは4者併用膀胱温存療法(Tetramodal therapy ,TeMT)を開発・実践しておられます。
TeMTはTMTのSelective preservationをベースに、地固めとして膀胱部分切除と骨盤リンパ節郭清を行う方法です。
藤井先生らが開発したプロトコールに従い膀胱部分切除を施行した107例において、5年 MIBC 非再発生存97%、5年疾患特異生存率は93%と非常に良好な成績が得られました
さらに膀胱機能も良好に保ち、患者さんは高いQOLを維持できています。
動画ではTeMTのより詳細なプロトコールや治療成績、膀胱内膀胱外両方からのアプローチによる手術の手技ついても解説いただいています。
ぜひご覧ください。