腎・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患
過活動膀胱の診断と治療

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【目次】
00:21~ 過活動膀胱(OAB)の定義
00:39~ 過活動膀胱(OAB)の有病率
01:17~ 過活動膀胱(OAB)の原因・発症メカニズム
03:36~ 過活動膀胱(OAB)の診断
04:42~ 過活動膀胱(OAB)の診療アルゴリズム
07:20~ 過活動膀胱(OAB)の治療
09:16~ 過活動膀胱の治療・行動療法
11:07~ 過活動膀胱の治療・薬物療法
15:08~ 超高齢社会での課題・高齢者に対する治療
17:58~ 抗コリン薬の是非と高齢者に対する薬物療法
20:13~ 難治性過活動膀胱
21:23~ 過活動膀胱の新しい治療薬

過活動膀胱の定義は「尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常は頻尿と夜間頻尿を伴うものである。
切迫性尿失禁は必須ではない」とされています。この超高齢化社会において問題となっているのが、日本における有病率です。40歳以上の男女の14.1%に過活動膀胱の症状が見られる、というデータが示されています。
80歳以上では4割の人が罹患していると言われています。人数でいうと1000万人の患者がいるということです。

排尿は、尿意を伝える「求心性神経」と、膀胱を収縮させる「遠心性神経」でコントロールされています。脳と膀胱をつなぐこれらの神経に異常をきたすことで、過活動膀胱を発症すると考えられています。
この原因と一部が神経因性です。脳疾患や脊髄疾患、馬尾・末梢神経疾患が原因となります。様々な神経疾患によって過活動膀胱が起こりうるということです。
ただし、過活動膀胱のうち神経因性は2割程度と言われており、その他8割は「非神経因性」です。
非神経因性としては、膀胱血流障害、自律神経系の活動亢進など男女共通のものや、女性に特有な発症メカニズムとしては、女性ホルモンの影響や骨盤臓器脱などがあります。
一方、男性に特有な発症メカニズムとしては、膀胱出口部の閉塞や男性ホルモンなどの内分泌環境の変化が挙げられます。

過活動膀胱は「尿意切迫感を必須とする症状症候群」と定義されていますので、特有の症状を把握することが診断において重要となります。また、過活動膀胱と同様の症状を示す疾患がいくつか存在するため、それらを除外診断することも必要です。除外診断するべき疾患としては、膀胱癌や前立腺癌などの悪性疾患、尿路結石、下部尿路の炎症性疾患があります。
また、過活動膀胱の原因疾患の中には、より適切な治療を行うために、一度は専門胃の診察を受けるべき疾患があります。例えば、下部尿路閉塞(前立腺肥大症)や神経疾患などです。

過活動膀胱の診断においては、症状の把握が重要となっています。そこで用いるのが「過活動膀胱症状質問表(OABSS)」と呼ばれるスコアリングです。必須症状の「尿意切迫感」を含めた4つの質問項目に答えることで点数をつけ、その点数によって過活動膀胱可動かの診断と、重症度の判定を行います。
続いて重要なのが除外診断です。除外診断では、尿検査や残尿量測定を行います。

過活動膀胱の治療は、一定のアルゴリズムに沿って行います。
過活動膀胱の治療で重要なのは、患者教育と治療目標の設定、QOLの評価です。

過活動膀胱の具体的な治療法の1つが行動療法です。生活指導や膀胱訓練、骨盤底筋訓練などが含まれています。治療法によって推奨グレードが定められており、患者さんに合わせて治療法を選びます。

行動療法が著効しない場合は、薬物療法を選びます。有用性や安全性が最も検討されているのが抗コリン薬で、新規作用機序の薬剤としてβ3アドレナリン受容体作動薬も処方可能です。薬物療法の推奨グレードは、薬剤ごと、男女ごとで差があります。症状改善が得られない時は薬剤の変更も検討されます。
男性の場合、前立腺肥大症などとの兼ね合いで、どのような治療がベターかを慎重に検討する必要があります。前立肥大症の治療薬と併用して行うケースでは、副作用の懸念などもあるため、注意が必要です。

過活動膀胱の治療薬が処方された患者のうち、65歳以上の高齢者の割合は83.1%です。
現在、過活動膀胱の治療は「高齢者への安全な薬物療法ガイドライン2015」に基づいて行われています。
このガイドラインの中で「高齢者における薬物服用に伴う有害事象増加の二大要因は①服用薬剤数の増加②薬物動態の加齢変化に基づく薬物感受性の増大」とされています。
高齢者は一般的に複数の疾患を合併している場合が多く、すでに多くの薬剤を投与されていることが多くあります。過活動膀胱の治療でも例外ではありません。治療においては、服薬内容の確認は必須です。
また、ガイドライン内では、高齢者における過活動膀胱の特徴が取り上げられています。特に、「他疾患で処方されている薬剤が過活動膀胱の症状に関与している」「抗コリン薬の副作用で患者の全身状態を悪化させることがある」という点は非常に注意するべき点です。
一方、高齢者では、低活動膀胱の症状が隠れていることがあります。排尿障害による蓄尿症状を常に検討する必要があるのです。つまり残尿測定が必須項目となります。

ムスカリン受容体は全身に分布しているため、抗コリン薬の副作用は全身に及びます。特に中枢神経系への作用は重大になりがちです。
実際は、軽度認知症の高齢者に対して、現在使用されている抗コリン薬の有効性と安全性は確認されており、投与は可能とされています。ただし、少なからず認知機能悪化の例も報告されているため、慎重な投与・経過 観察が必要です。
したがって、高齢者に対する過活動膀胱の治療では、薬物療法の前に、生活習慣の改善や行動療法などにトライすることが推奨されています。
ただし、薬物療法は過活動膀胱の治療の根幹をなすため、高齢者への薬剤投与は「少量で開始、緩やかに増量」「短期間で薬効を評価」「服薬方法を簡易に」「多剤服用を避ける」「服薬コンプライアンスを確認」といったポイントが挙げられます。

難治性過活動の定義は「一次治療である行動療法および各種抗コリン薬(経口薬、貼付薬)やβ3作動薬を含む薬物療法を単独ないし併用療法をして、少なくとも12週間の継続療法を行っても抵抗性である場合」とされています。
既存の治療に抵抗性の難治性過活動膀胱は、およそ25%程度存在します。
難治性過活動膀胱に対する現在のところの治療法は、「神経変調療法」「ボツリヌス毒素(欧米の場合)」「外科的治療」があります。
新規治療薬の開発も試みられています。

過活動膀胱の発症背景には、メタボリック症候群などが隠れていることが示唆されており、つまりエネルギー代謝の異常が病態にあるのではないかと言われています。過活動膀胱を全身疾患として捉えて治療・予防する試みが始まっています。