【目次】
00:12~ イントロ
00:31~ 遺伝カウンセリング領域について
01:20~ 遺伝カウンセリングの定義
02:35~ 遺伝カウンセリングについて
04:05~ 遺伝カウンセリングの対象になる遺伝性疾患について
05:08~ 難病と遺伝子について
06:09~ 難病診断の特徴
07:26~ 遺伝学的検査について(従来法)
08:11~ 遺伝学的検査について(全エキソーム解析)
08:54~ さまざまな遺伝子解析
09:37~ IRUD(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)
11:01~ IRUDの実績
11:39~ Orphanetとは
12:17~ 横浜市立大学附属病院のIRUD体制
13:42~ 横浜市立大学附属病院でのIRUD件数
14:19~ 横浜市立大学附属病院のIRUD症例(症例供覧)
16:16~ 横浜市立大学附属病院のIRUDに参加した家族の思い
17:40~ 遺伝子解析の課題
18:40~ 患者の願い
19:05~ 横浜市立大学附属病院メディカルゲノムセンター
19:54~ 横浜市立大学附属病院遺伝子診療科
20:23~ 横浜市立大学附属市民総合医療センター遺伝子診療科
20:56~ 遺伝子診療科カンファレンス
【概要文】
遺伝カウンセリング領域は、産婦人科領域、小児領域、成人領域で遺伝性腫瘍領域の4つに大別されます。
遺伝カウンセリングの定義は「疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理学的影響および家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセス」とされています。遺伝カウンセリングは、遺伝性が明らかな方、遺伝検査のためだけではありません。
遺伝カウンセリングの臨床現場では、まず「臨床情報の整理と遺伝学的評価の提案」を行います。家系図を作成しながら家族歴をより詳しく聴取します。
検査前には、患者対して、疾患や遺伝形式、遺伝学的検査について、検査後は、結果を丁寧に説明して、今後の方針や定期フォローについて相談します。さらに他科へのフォロー依頼や専門家の紹介も必要に応じて行い、継続的なケアに取り組みます。また、血縁者への対応も行い、リスク評価と発症前検査の検討を行います。
遺伝子検査にまつわる様々なことについては、自律的決定(その人らしい決定)を尊重することが重要です。
遺伝カウンセリングの対象となる遺伝性疾患には様々ありますが、それぞれに明確な境界はなく、遺伝的影響の大きさはグラデーションです。
難病の中には、特定の遺伝子上の変異が原因で発症する疾患が数多く含まれています。
難病患者とその家族は、「なぜ病気に?」といった不安を抱えています。一方、医師側には「難病はとにかく診断が難しい!」という問題があります。しかし、診断は重要で、そのためには、専門的な診療知識・経験・特徴的な検査が必要ですまた、遺伝学的アプローチも重要です。
遺伝子解析の従来法(Sanger Sequence)では、生まれ持っている遺伝子の配列を調べます。
一方、全エキソーム解析では、従来法と同様に生まれ持っている遺伝子の配列を調べますが、採血して抽出したDNAを断片化、次世代シーケンサーで解析します。
遺伝子の解析数や対象領域によって、解析方法は異なります。
IRUD(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)は、全国の未診断疾患患者に対して、体系的に診療する医療システムを確立し、患者情報を収集蓄積して開示するシステムを構築することを目的としています。
IRUDの6年間の実績は、エントリー5136症例、診断確定数2247症例で、遺伝子解析による診断率は43.7%でした。新規疾患の発見は42疾患あり、解決した症例の多くは指定難病もしくはOrphanet疾患です。
Orphanetとは、希少疾患患者の診断と治療の向上を図ることを目的とした、希少疾患や希少疾患利用医薬品について様々な情報を参照可能にしたデータベースです。
横浜市立大学附属病院でのIRUD体制について紹介します。
まず、かかりつけ医から未診断の患者を紹介していただき、遺伝子診療科でIRUDの説明・遺伝カウンセリングを実施します。同意が得られた場合は、検査に移ります。基本的には本人と両親の採血を同時に実施します。
遺伝子解析は網羅的に実施しますが、疾患に関連する部分の情報のみを検索します。そこで病的バリアントが同定されれば、種々のデータベースに登録されます。その後、診断委員会において様々な専門家が議論・検討を行い、報告書を作成します。
横浜市立大学附属病院での診断率はおよそ30%で、検体提出から報告まで1年前後かかります。解析費用は不要で、遺伝カウンセリング料は患者負担です。
横浜市立大学附属病院でのIRUDエントリー数は62症例、遺伝子解析による診断率は29%です。講演では、横浜市立大学附属病院での実際のIRUD症例を供覧しています。
横浜市立大学附属病院でIRUDに参加された家族の思いを紹介します。
原因が確定した患者家族からは「ようやく原因が分かって安心した」「症状と遺伝子以上が繋がったことで納得した」「今後の研究に期待する」「これまでの臨床診断と異なる結果に戸惑っている」など様々な声がありました。
一方、原因が判明しなかった家族にも「残念だ」「見つからなかったことにほっとしている」「将来の可能性への期待」など様々な思いがあります。
遺伝子解析は「全てが分かる」と誤解されることが多いですが、配列が判明することと原因が分かることはイコールではありません。遺伝子解析の結果や解釈を正確に理解して、誤解が生じないように、丁寧に説明・対応することが必要です。
患者とその家族の願いは「病気の治療法が見つかること」です。診断確定のスタート地点に立つことが、その先に繋がる一歩目となります。
横浜市立大学附属病院メディカルゲノムセンターは、2019年に開設され、3つの診療科と遺伝学教室が協力してゲノム診療を推進しています。遺伝学教室は、世界に先駆けて多くの遺伝的原因を明らかにしており、IRUD解析センターでもあります。
横浜市立大学附属病院遺伝子診療科では、遺伝カウンセリングや出生前検査などを実施しています。2002年に新設され、IRUD診療拠点病院となっています。臨床遺伝専門医の他、専門のカウンセラーなどによる診療体制が整っています。
横浜市立大学附属市民総合医療センター遺伝子診療科は、2020年4月より新設され、附属病院とのより強い連携を目指し、各種遺伝子検査に関する相談などを実施しています。
遺伝子診療科カンファレンスを毎月1回、オンラインで開催しています。症例相談の他、遺伝について学びたい先生、臨床遺伝専門医の資格取得に興味のある先生たちに向けた会です。
00:12~ イントロ
00:31~ 遺伝カウンセリング領域について
01:20~ 遺伝カウンセリングの定義
02:35~ 遺伝カウンセリングについて
04:05~ 遺伝カウンセリングの対象になる遺伝性疾患について
05:08~ 難病と遺伝子について
06:09~ 難病診断の特徴
07:26~ 遺伝学的検査について(従来法)
08:11~ 遺伝学的検査について(全エキソーム解析)
08:54~ さまざまな遺伝子解析
09:37~ IRUD(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)
11:01~ IRUDの実績
11:39~ Orphanetとは
12:17~ 横浜市立大学附属病院のIRUD体制
13:42~ 横浜市立大学附属病院でのIRUD件数
14:19~ 横浜市立大学附属病院のIRUD症例(症例供覧)
16:16~ 横浜市立大学附属病院のIRUDに参加した家族の思い
17:40~ 遺伝子解析の課題
18:40~ 患者の願い
19:05~ 横浜市立大学附属病院メディカルゲノムセンター
19:54~ 横浜市立大学附属病院遺伝子診療科
20:23~ 横浜市立大学附属市民総合医療センター遺伝子診療科
20:56~ 遺伝子診療科カンファレンス
【概要文】
遺伝カウンセリング領域は、産婦人科領域、小児領域、成人領域で遺伝性腫瘍領域の4つに大別されます。
遺伝カウンセリングの定義は「疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理学的影響および家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセス」とされています。遺伝カウンセリングは、遺伝性が明らかな方、遺伝検査のためだけではありません。
遺伝カウンセリングの臨床現場では、まず「臨床情報の整理と遺伝学的評価の提案」を行います。家系図を作成しながら家族歴をより詳しく聴取します。
検査前には、患者対して、疾患や遺伝形式、遺伝学的検査について、検査後は、結果を丁寧に説明して、今後の方針や定期フォローについて相談します。さらに他科へのフォロー依頼や専門家の紹介も必要に応じて行い、継続的なケアに取り組みます。また、血縁者への対応も行い、リスク評価と発症前検査の検討を行います。
遺伝子検査にまつわる様々なことについては、自律的決定(その人らしい決定)を尊重することが重要です。
遺伝カウンセリングの対象となる遺伝性疾患には様々ありますが、それぞれに明確な境界はなく、遺伝的影響の大きさはグラデーションです。
難病の中には、特定の遺伝子上の変異が原因で発症する疾患が数多く含まれています。
難病患者とその家族は、「なぜ病気に?」といった不安を抱えています。一方、医師側には「難病はとにかく診断が難しい!」という問題があります。しかし、診断は重要で、そのためには、専門的な診療知識・経験・特徴的な検査が必要ですまた、遺伝学的アプローチも重要です。
遺伝子解析の従来法(Sanger Sequence)では、生まれ持っている遺伝子の配列を調べます。
一方、全エキソーム解析では、従来法と同様に生まれ持っている遺伝子の配列を調べますが、採血して抽出したDNAを断片化、次世代シーケンサーで解析します。
遺伝子の解析数や対象領域によって、解析方法は異なります。
IRUD(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)は、全国の未診断疾患患者に対して、体系的に診療する医療システムを確立し、患者情報を収集蓄積して開示するシステムを構築することを目的としています。
IRUDの6年間の実績は、エントリー5136症例、診断確定数2247症例で、遺伝子解析による診断率は43.7%でした。新規疾患の発見は42疾患あり、解決した症例の多くは指定難病もしくはOrphanet疾患です。
Orphanetとは、希少疾患患者の診断と治療の向上を図ることを目的とした、希少疾患や希少疾患利用医薬品について様々な情報を参照可能にしたデータベースです。
横浜市立大学附属病院でのIRUD体制について紹介します。
まず、かかりつけ医から未診断の患者を紹介していただき、遺伝子診療科でIRUDの説明・遺伝カウンセリングを実施します。同意が得られた場合は、検査に移ります。基本的には本人と両親の採血を同時に実施します。
遺伝子解析は網羅的に実施しますが、疾患に関連する部分の情報のみを検索します。そこで病的バリアントが同定されれば、種々のデータベースに登録されます。その後、診断委員会において様々な専門家が議論・検討を行い、報告書を作成します。
横浜市立大学附属病院での診断率はおよそ30%で、検体提出から報告まで1年前後かかります。解析費用は不要で、遺伝カウンセリング料は患者負担です。
横浜市立大学附属病院でのIRUDエントリー数は62症例、遺伝子解析による診断率は29%です。講演では、横浜市立大学附属病院での実際のIRUD症例を供覧しています。
横浜市立大学附属病院でIRUDに参加された家族の思いを紹介します。
原因が確定した患者家族からは「ようやく原因が分かって安心した」「症状と遺伝子以上が繋がったことで納得した」「今後の研究に期待する」「これまでの臨床診断と異なる結果に戸惑っている」など様々な声がありました。
一方、原因が判明しなかった家族にも「残念だ」「見つからなかったことにほっとしている」「将来の可能性への期待」など様々な思いがあります。
遺伝子解析は「全てが分かる」と誤解されることが多いですが、配列が判明することと原因が分かることはイコールではありません。遺伝子解析の結果や解釈を正確に理解して、誤解が生じないように、丁寧に説明・対応することが必要です。
患者とその家族の願いは「病気の治療法が見つかること」です。診断確定のスタート地点に立つことが、その先に繋がる一歩目となります。
横浜市立大学附属病院メディカルゲノムセンターは、2019年に開設され、3つの診療科と遺伝学教室が協力してゲノム診療を推進しています。遺伝学教室は、世界に先駆けて多くの遺伝的原因を明らかにしており、IRUD解析センターでもあります。
横浜市立大学附属病院遺伝子診療科では、遺伝カウンセリングや出生前検査などを実施しています。2002年に新設され、IRUD診療拠点病院となっています。臨床遺伝専門医の他、専門のカウンセラーなどによる診療体制が整っています。
横浜市立大学附属市民総合医療センター遺伝子診療科は、2020年4月より新設され、附属病院とのより強い連携を目指し、各種遺伝子検査に関する相談などを実施しています。
遺伝子診療科カンファレンスを毎月1回、オンラインで開催しています。症例相談の他、遺伝について学びたい先生、臨床遺伝専門医の資格取得に興味のある先生たちに向けた会です。