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緑内障が疑われたら ~検査・診断・治療を総ざらい~ Part1


北里大学病院 眼科 主任教授 庄司 信行先生によるプレゼンテーションPart1になります。

【目次】
00:16~ 緑内障の定義
00:55~ 視神経乳頭と篩板部
02:34~ 緑内障による篩状板の変化
03:15~ 緑内障による視神経乳頭の変化
04:20~ 神経繊維の障害と視野の変化
05:08~ 緑内障の視神経障害メカニズム
06:30~ 眼圧は変動する
06:53~ 眼圧以外の因子
07:20~ 緑内障の症状

【概要文】
緑内障は「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる、眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されています。
眼底検査では、視神経乳頭が見えます。これは網膜の情報を脳に伝える神経繊維が集まっている場所です。視神経乳頭を矢状断した時に見える層状の部分を篩状板と呼び、孔(laminar pore)の開いた膜があり、その孔を神経線維が通ります。
緑内障で眼圧が高くなると篩状板は圧排され、孔を通る神経繊維は障害されます。
これは結果的に視野障害の拡大を誘発します。
視神経乳頭の辺縁部(赤みがかった部分)は神経線維が集合しており、陥凹部(中央の白い部分)は神経繊維がない部分です。緑内障が進行すると、神経線維が消失することで陥凹部が拡大して見えます。
緑内障の進行によって篩状板が圧排されてそこを通る神経線維が障害されると、対応した視野が障害されます。視野は神経線維の広がりと1対1対応しているので、弓状に見えない部分が拡大していきます。

緑内障がこのように進行していくメカニズムとして、以前では「眼圧が異常に高くなって強い圧迫で視神経乳頭が障害されるため」と考えられていましたが、近年の研究によって、正常眼圧緑内障も知られる様になり、現在では2つの因子が考えられています。
1つ目が、「眼圧依存性因子」です。この場合、眼圧下降によって緑内障の進行は停止もしくは緩徐になります。
2つ目が、「眼圧非依存性因子」です。眼圧下降だけでは防ぐことができない視神経障害の可能性や、局所および全身における循環障害がこれに当たります。その他、自己免疫機構や神経栄養因子の枯渇、酸化ストレスなども挙げられます。
これら二つの因子は完全に独立したものでは無く、混在することがあります。

眼圧は様々な要因で変動します。脈波によっても変わりますし、日内変動、季節変動もあります。そのため、1、2回の眼圧測定で眼圧の評価をすることは困難です。
眼圧以外の緑内障原因因子としては、視神経乳頭の血流、睡眠時無呼吸症候群、抗酸化物質などが挙げられます。これらの研究はまだ始まったばかりで、診断・治療に反映されるのはまだ先のことになりそうです。

緑内障は、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の2つに大別され、それぞれで異なる症状を呈します。
開放隅角緑内障の場合、慢性的な進行が多く、痛みは稀です。正常眼圧の場合も痛みはなく、進行してからでなければ視野異常などの自覚症状は見られません。
閉塞隅角緑内障の場合、急性と慢性がありますが、急性では、急な眼圧上昇による眼痛・頭痛・吐き気・嘔吐などの症状が見られます。慢性では、頭痛や視野障害が見られます。