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カテーテルアブレーションによって心房細動を根治させる意味を考える


東京慈恵会医科大学附属病院 循環器内科 教授 山根 禎一 先生によるプレゼンテーションになります。

【目次】
00:37~ 心房細動に対する一般的な概念
01:30~ 心房細動が及ぼす死亡率への影響
05:04~ 心房細動の薬物治療における比較
06:48~ 心房細動の震源地はどこか?
12:22~ 肺静脈隔離術の治療成績
13:13~ 治療の最先端(バルーンによる治療)
14:23~ 進行度による房細動アブレーションの治療成績
15:15~ 心房細動の早期診断
16:03~ カテーテルアブレーションの適応
16:59~ 心房指導の治療は患者の予後改善につながるのか?

【概要文】
心房細動は良性疾患に分類される、というのが一般的な概念です。適切な抗凝固治療を行っていれば、重大な問題は無い疾患だと考えられてきました。

抗凝固治療などが発達する以前の論文では、心房細動を抱えている患者さんの場合、死亡率が2倍近く上昇するという結果が報告されています。
最近発表された論文では、抗凝固治療を施行した患者さんでの予後が検討され、年間死亡率が4.72%と算出されました。これは、同じ年代の平均的な死亡率と比較して3倍以上となっています。
また、心房細動の患者さんの死亡原因を検討すると、半数は心不全で死亡していることが分かっています。つまり、心房細動そのものが予後に影響しており、脳梗塞の予防のみでは不十分だということが分かります。

2002年に発表された研究では、心房細動患者に対する薬物によるリズムコントロールとレートコントロールを比較したところ、死亡率に大きな差は無い、という結果が出ました。
いずれの治療法も「生涯にわたってコントロールしていく」という治療で、当時は一生付き合っていく病気であったために出てきた研究でした。この研究から15年以上経過した今、心房細動は「治療可能な病気」となってきており、「心房細動を治す治療が予後を改善するのか」という点が焦点となっています。

カテーテルアブレーションによる心房細動の治療は、1990年に盛んに行われました。初めの頃は合併症も多く、治療成績は芳しくありませんでした。
その後、心房細動の「震源地」が肺静脈であるという研究結果が発表され「肺静脈隔離術」という術式が開発されました。
1回の肺静脈隔離術によって、発作性(初期段階)の心房細動の8~9割を根治することが可能であると言われています。

治療の最先端として、バルーン治療があります。これは、従来法と比較して治療効果・安全性ともに同等だとされています。
進行度によって心房細動アブレーションの治療成績は異なっています。発作性であれば8~9割といった治療成績が、持続性、長期持続性になるにつれて下がっていきます。

無症状の心房細動を早期診断するためには、スマートフォンアプリやウェアラブル端末による脈拍や心電図の測定が効果的と考えられています。
カテーテルアブレーションは、年齢・症状・進行度を総合的に考慮して適応されます。

ある研究では、薬物治療とカテーテルアブレーションを比較すると、カテーテルアブレーションの方が予後は良かったという結果が報告されています。
心房細動は患者の予後に影響を与える疾患であり、また進行性の疾患です。早期に発見すれば、カテーテルアブレーションによって根治が可能な疾患でもあります。
早期発見・早期治療は、患者の予後改善につながっています。