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がん・生殖医療に関する地域連携モデルについて -Part1-


岐阜大学医学部附属病院 産婦人科 教授 古井 辰郎 先生によるプレゼンテーションになります。

【目次】
00:13~ がん診療と妊孕性低下
01:03~ 生殖補助医療(ART)
02:38~ 妊孕性温存の動向
03:46~ 具体的な妊孕性温存の選択肢
05:40~ 胚、未受精卵、卵巣組織凍結の比較
08:17~ 挙児希望を有するがん患者への妊孕性に関する情報提供
09:30~ がんサバイバーにおける妊孕性に関する悩み

【概要文】
小児・AYA世代のがん患者が増加している一方で、がん診療の進歩によってがんサバイバーも増加しています。この人たちの一部は、治療の過程で精巣(睾丸)や卵巣・子宮の摘出、抗癌剤の使用、骨盤放射線照射などを経験しています。これらの治療は必要なこととして行われていますが、同時に妊孕性の低下を招くものです。

生殖補助医療(ART)は、近年大きく進歩しています。2017年の統計では、全出生児の1/17.2がARTによる妊娠で、そのうち84.8%が凍結胚移植でした。
また、生殖補助医療の技術を応用することで、卵巣の組織そのものを凍結保存することも可能になりつつあります。
AYA世代のがん治療において、がん治療前に卵子や精子、受精卵を凍結しておけば、治療後に卵巣や精巣の機能が廃絶したとしても、子どもを持てる可能性があります。

初めて体外受精による出産が行われた1978年以来、技術の進歩は目ざましく、妊孕性温存についての各国の動向は大きく変化しています。本邦でも様々な声明やガイドラインの発表によって、がん・生殖医療に関する法整備が進んでいます。

具体的な妊孕性温存の選択肢にはいくつかあります。がん治療前のART、卵巣障害を回避する方法、婦人科がんに対する温存治療などです。その他、子を持つための選択肢として、卵子提供や代理懐胎、養子縁組などがあります。

ARTにおける凍結法の比較について見てみましょう。大きく分けて胚(受精卵)凍結、未受精卵子凍結、卵巣組織凍結があります。それぞれに対象年齢やパートナーの有無の条件があり、特徴や問題点もあります。

「小児、思春期、若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017」では、「挙児希望を有するがん患者に対して、どのような妊孕性に関する情報提供をするべきか」という問いついて、①がん治療を最優先とする ②がん治療によって生殖可能年齢内に不妊となる可能性とそれに関する情報を患者に伝える ③可能な限り早期に生殖医療を専門にする医師を紹介する ④がん治療医は生殖医療を専門とする医師と密に医療連携をとる とされています。

「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」では、がんサバイバーの不妊に関する悩みと情報提供の不足が指摘されています。がん治療に携わる医師のほとんどが妊孕性に関する情報提供が必要であると回答していますが、実際に妊孕性温存の方法にういての説明を行っているのは66.9%に留まっています。
本邦のがん診療施設における生殖医療専門医や生殖補助医療の提供体制は、AYA世代がん患者を多く扱う施設とそれ以外で大きく異なっており、現場のリソース不足と偏在が見て取れます。