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がん・生殖医療に関する地域連携モデルについて -Part2-


岐阜大学医学部附属病院 産婦人科 教授 古井 辰郎 先生によるプレゼンテーションになります。

【目次】
00:12~ AYA世代に対するがん医療の充実
00:48~ 妊孕性温存の意思決定における患者の葛藤
02:03~ 岐阜県モデルの紹介
04:38~ 妊孕性温存における問題
05:43~ 地域におけるがん・生殖医療ネットワークの全国展開
06:58~ がん・生殖医療に役立つ資料紹介
07:53~ どのようなAYAがん患者に、どのようなニーズがあるか

【概要文】
AYA世代や若年のがん患者に対する生殖医療の情報提供が不足している状況から、第3期がん対策推進基本計画では、「2.がん医療の充実」の中に「AYA世代のがん」が盛り込まれました。この中で「国は、医療従事者が患者に対して治療前に正確な情報提供を行い、必要に応じて、適切な生殖医療を専門とする施設に紹介できるための体制を構築する」とされています。

若年がん患者は、癌に対する不安や悩み、治療に対する理解や意思決定など大きな負担を強いられている中で、妊孕性温存に対する意思決定を求められます。妊孕性温存の選択には、がん治療の遅れ・高度な医療費原疾患への影響・合併症・成功率の不確定さ・子どもの福祉・出産育児へ不安など、様々な問題が絡んでいます。患者は、同時多発的に生じるこれらの問題を理解し、不確実な中で短期間のうちに自己決定をしなければなりません。
患者支援のためには、適切なタイミングで、正確な情報提供を行う医療連携が重要です。

岐阜県では、2013年2月より、若年がん患者ががん診療施設で診断を受けた段階で、妊孕性温存や生殖医療へのニーズがある場合には、まず、岐阜大学病院がんセンターのがん・生殖医療相談でカウンセリングを行います。十分な情報提供と意思決定支援のもと、希望があれば、生殖医療施設とも連携した妊孕性温存を行います。また、妊孕性温存に対しての適応・希望がないと分かった場合は、速やかに癌治療を開始できます。これが、岐阜県がん・生殖医療ネットワーク(GPOFs)の仕組みです。
講演内では、GPOFsを介した岐阜大学病院の実績と、相談後の妊孕性温存選択動向の統計を紹介しています。

妊孕性温存を行う上で問題となることとして、長期におよぶ凍結管理、高額な医療、温存非選択症例・不成功例に対する心理サポート、卵巣機能フォローとその治療などが挙げられます。これらの問題対処のためには、多くの診療科の連携が重要です。

地域におけるがん・生殖医療ネットワークは、2019年9月現在、22府県で稼働しており、8県で準備中となっています。生殖医療に対する様々な取り組みは、日本がん・生殖医療学会HPで紹介されています。「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」のページでは、がん患者向けのパンフレットも公開されています。
その他、がん・生殖医療に役立つ資料として、「がん・生殖医療ハンドブック:妊孕性・生殖機能温存療法の実践ガイド」、「医療従事者が知っておきたいAYA世代がんサポートガイド」などがあります。

AYA世代がん患者と一口に言っても、それぞれに多様な癌腫と症状を抱えており、妊孕性温存が必要でない場合、妥当でない場合もあります。
患者の強い挙児希望と十分な理解を大前提として、他職種の連携による適切なタイミングの正確な情報提供と意思決定支援を行うことが大切です。加えて、妊孕性温存断念症例に対しても総合的な支援が必要です。