【開発の経緯】
ジンタス錠(以下、「本剤」)は、ヒスチジン亜鉛水和物の錠剤である。
ヒスチジン亜鉛水和物は、ヒスチジンとの亜鉛錯体であり、
活性本体は既承認の酢酸亜鉛水和物製剤であるノベルジン錠/ノベルジン顆粒(以下、「ノベルジン製剤」)と同じ亜鉛である。
亜鉛は生体内の必須微量元素として、生体維持に欠かせない多くの酵素に含まれ、様々な病態や状態に応じて種々の役割を果たす。
低亜鉛血症は血清亜鉛濃度が低下した状態であり、亜鉛が欠乏すると味覚異常、皮膚炎、脱毛、貧血、口内炎、性腺機能不全、易感染性、褥瘡、食欲
低下、発育障害(小児)など多彩な症状を発症する 1~5)。
本剤の製造販売承認申請時の2023年3月において、国内で低亜鉛血症の効能・効果を持つ薬剤は、ノベルジン製剤のみであった。
ヒスチジンを含むアミノ酸などの低分子は亜鉛イオンと錯体化することで亜鉛の吸収を向上させることが報告されており 6,7)、
ヒスチジン亜鉛水和物は比較的安定な錯体構造であるため、
消化管で解離する亜鉛イオンは無機亜鉛塩よりも少なく、亜鉛イオンによる直接的な副作用(悪心、嘔吐等)が低減すると考えられている 8)。
ドイツでは「食生活の変更では改善できない場合の臨床的に証明された亜鉛欠乏症」の効能又は効果でヒスチジン亜鉛水和物を他社※が承認・販売している。
一方、国内において低亜鉛血症の効能又は効果を持つ薬剤であるノベルジン製剤は、主な副作用である悪心・嘔吐などの消化器系副作用に配慮して、
開始用法は1日2回投与とし、1回あたりの投与量を少なくすることで開発が行われた。
本剤は、ノベルジン製剤の1日亜鉛投与量を1日1回で投与でき、服薬アドヒアランスの改善が期待できる薬剤として開発した。
ノーベルファーマ株式会社は、低亜鉛血症患者を対象にノベルジン錠を対照とした非盲検無作為化比較試験を実施し、
本剤の有効性の非劣性の検証及び安全性の検討、長期投与時(1年間)の安全性及び有効性を確認した 9)。
以上のことから、本剤は低亜鉛血症治療において新たな選択肢になりうると考え、
ノーベルファーマ株式会社が2023年3月に製造販売承認申請を行い、2024年3月に「低亜鉛血症」の効能又は効果で承認された。