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小児がんを疑うとき


【目次】
00:40~ 小児がんの罹患率
01:55~ 小児がんの疾患内訳
02:14~ 白血病と疑う時(初発時の症状)
03:52~ 急性白血病診断時の身体所見
04:34~ リンパ節腫大のみを主訴とした場合
05:43~ 小児ALL診断時の血算
05:52~ 治療開始までの期間が予後に与える影響
06:48~ 脳腫瘍を疑う症状
07:20~ 小児脳腫瘍の病理
07:44~ 小児脳腫瘍の早期診断が予後を改善するか
08:42~ イギリスにおける小児脳腫瘍の早期発見への取り組み
09:31~ まとめ
10:01~ 症例(上大静脈症候群を伴うリンパ腫/白血病)

【概要文】
神奈川県立こども医療センター 病院長 後藤 裕明 先生によるプレゼンテーションになります。
小児がんの罹患率は小児人口1万人あたり1名と推計されています。
小児がんの70%は治癒しますが、1歳以上の小児を含む若年者において、悪性新生物は上位を占める死亡原因となってます。つまり、小児がんの罹患率は極めて低いですが、見逃すことはできない重要な疾患であるといえます。

2012~2014年に神奈川県立こども医療センターにおいて、小児急性白血病の診断契機となった症状は、発熱や上気道症状といった非特異的症状が多く、出血傾向などの血液疾患を疑う症状から発見に至ったケースは3割程度に留まりました。
これらの患者たちのほとんどは、小児がんの専門医に紹介される前に、かかりつけ医等で血液検査を実施していましたが、血液検査に至った理由として、「長く続く発熱」が最も多く見られました。
一方、専門医による診断時の身体所見では、リンパ節腫脹や出血斑、臓器腫大が見られました。つまり、発熱を訴えて受診した患者に対しても、頚部や腹部の触診を実施することで、早期に白血病を発見できる可能性が高くなります。

イタリアの施設における調査では、リンパ節腫大を認めた小児患者322人の原因疾患の半数が特定され、そのうち悪性腫瘍は2.5%と報告されました。
つまり、リンパ節腫大を認めたからといって悪性腫瘍である可能性は低いため、その他の所見や病歴を考慮して、血液検査などの精査を行うかどうかを判断する必要があります。
小児ALL診断時の血算を見ると、多くのケースで血球減少を呈していることが分かります。

カナダ、オンタリオ州での研究で、初診から診断、または治療開始までの期間で予後を比較した結果が報告されました。
これによると、治療開始までの期間が長くなると予後が不良になるという結果でした。診断までに時間を要し、感染症などを合併したために抗癌剤治療が遅れると予後に影響する、ということかもしれません。

脳腫瘍は血液腫瘍の次に多い小児がんです。脳腫瘍患者の初発症状として多いのは、頭痛や嘔吐といった頭蓋内圧亢進症状がほとんどでした。
小児脳腫瘍の病理診断の内訳を見ると、low gradeも多いことが分かります。low gradeでは進行が比較的緩徐で、上に示したような初発症状が初期にはそれほど強くないことが多いです。

小児脳腫瘍の早期発見が生命予後改善に貢献するかは意見が分かれていますが、診断までの期間が神経学的予後に関係することが示唆されています。
イギリスでは、家庭医を対象として、小児脳腫瘍の早期発見に取り組んでおり、年代ごとに脳腫瘍を疑うべき症状をまとめています。
小児脳腫瘍の場合、激烈な症状でなくても、少しずつ症状が出現することがあるので、急性胃腸炎を疑う症状でも、不自然に反復するようであれば、脳腫瘍を鑑別に加える必要があります。
乳児検診における頭囲にも重要な所見なので、こちらにも注目すると良いでしょう。

ここで供覧する症例は、上大静脈症候群を伴うリンパ腫/白血病の患者です。この疾患では、自覚症状を訴えてから気道閉塞までが数時間と非常に短いことがあります。
小児がんの中には、早期に診断しなければ救命が難しい疾患もあることを知っておくことが重要です。