山形大学附属病院 耳鼻咽喉科学分野 教授 欠畑 誠治 先生によるプレゼンテーションになります。
【目次】
00:20~ イントロ
00:57~ 野村医師の業績と耳科手術の進歩
03:43~ 耳の内視鏡のブレイクスルーとTEESの現在
07:17~ 耳科手術のゴール
07:35~ 耳科手術を安全・確実に行うためのコツとは
09:17~ 耳科手術のパラダイムシフト
11:52~ TEESの問題点
14:09~ 『KAIZEN』の理念と現在
15:44~ どのように耳の深部へ到達するのか(Powerd TEESの実例)
18:42~ Under-water TEESの実例
19:27~ Non-Powerd TEESとPowerd TEES
20:37~ COVID-19感染予防の工夫
25:02~ Heads-up SuegeryとしてのTEES
27:15~ EES2022の紹介
【概要文】
野村医師は、1981年、当時最先端の針状鏡を駆使して、中耳の観察を行いました。微細な構造の観察に世界で初めて成功した例です。
その後様々な技術の発展により、2019年になって、内視鏡により、経外耳道的に鼓膜を翻転することで、鼓室内の微細な構造を観察することができる技術が紹介されました。
耳の内視鏡手術のブレイクスルーは、HDカメラの登場でした。
現在行われているTEES(Transcanal Endoscopic Ear Surgery)の特徴として、①広い視野 ②死角が少ない ③高拡大で手術可能 ④手術野の映像を共有できる ⑤低侵襲 の5つが挙げられます。
顕微鏡では見える視野が限られていますが、内視鏡は広い視野に少ない死角で手術をすることができます。見えていなかった、そこにあった構造物が新たに「発見」されるということも起こりました。
耳科手術のゴールは「低侵襲」「安全」「結果が予測できる」「機能的であること」と考えられます。では、耳科手術を安全・確実に行うためのコツとは何でしょうか。
技術発展のその時々で、過去の医師たちがそれぞれに「コツ」を述べてきました。
内視鏡の登場によって耳科手術は大きく変わりました。「内視鏡併用で、明視下に、安全確実に、操作する」こと、これが耳科手術における最新の「コツ」と言えるでしょう。
1997年にTEESが登場し、耳科手術はパラダイムシフトを迎えました。内視鏡で行う耳科手術が広がり、「外耳道経由で、視点を動かしながら、明視下に、安全確実に、操作する」という技術が不変的なものとなりました。
TEESの登場によって、低侵襲な治療が実現して患者の負担が軽減されただけでなく、術者である医師の負担も軽減されています。”Heads-up surgery”と呼ばれ、楽な姿勢で手術を行うことが可能となりました。
TEESの問題点として、①2Dであること ②片手操作になること ③末梢へのアクセスの難しさ ④狭い耳深部での施術 が挙げられますが、これらの問題点を克服する努力は日夜続けられています。
内視鏡の登場によって私たちは「人間の『眼』を超えた『眼』」を持つことは可能になりましたが、「人間の『手』を超えた『手』」はまだ現実のものではありません。
この点において、現在使われている手術ロボットがよりミニチュア化することで、耳科手術への応用が期待されます。
技術の応用を待つだけではなく、現在ある技術を発展させる、つまり「改善(KAIZEN)」することも重要です。
「どのように耳の深部へ到達するのか」という問題点については、Powerd TEESが一つの解決策となっています。
講演では、実際のPowerd TEESの手術ビデオを供覧しています。
P,T,A領域までの症例にはNon-Powerd TEESで対処し、それ以上の例ではPowerd TEESを適用しています。
Powerd TEESで用いる器具はエアロゾル発生源となると考えられています。ここからの感染を防ぐために、ガーゼで術野の一部を覆い、切れ目を入れてそこから内視鏡と手術機械を挿入しています。これだけでもエアロゾルの拡散を防ぐことができます。
さらに、山形大学で開発されたZAOSONiC®︎を使うことで、ほとんどエアロゾルの飛散無く手術することが可能になっています。
その他、Under-waterでの手術など、様々な感染予防対策が実施されています。
山形大学で行われているTEESの具体的な手技については、「TEES(経外耳道的内視鏡下耳科術)アトラス」という書籍で解説されています。
講演では、Heads-up SuegeryとしてのTEESについて紹介する動画が供覧されています。
「EES2022」では、内視鏡のみならず耳科手術に関わるイノベーション全て、さらに感音難聴の治療などについてもディスカッションが行われる予定です。
【目次】
00:20~ イントロ
00:57~ 野村医師の業績と耳科手術の進歩
03:43~ 耳の内視鏡のブレイクスルーとTEESの現在
07:17~ 耳科手術のゴール
07:35~ 耳科手術を安全・確実に行うためのコツとは
09:17~ 耳科手術のパラダイムシフト
11:52~ TEESの問題点
14:09~ 『KAIZEN』の理念と現在
15:44~ どのように耳の深部へ到達するのか(Powerd TEESの実例)
18:42~ Under-water TEESの実例
19:27~ Non-Powerd TEESとPowerd TEES
20:37~ COVID-19感染予防の工夫
25:02~ Heads-up SuegeryとしてのTEES
27:15~ EES2022の紹介
【概要文】
野村医師は、1981年、当時最先端の針状鏡を駆使して、中耳の観察を行いました。微細な構造の観察に世界で初めて成功した例です。
その後様々な技術の発展により、2019年になって、内視鏡により、経外耳道的に鼓膜を翻転することで、鼓室内の微細な構造を観察することができる技術が紹介されました。
耳の内視鏡手術のブレイクスルーは、HDカメラの登場でした。
現在行われているTEES(Transcanal Endoscopic Ear Surgery)の特徴として、①広い視野 ②死角が少ない ③高拡大で手術可能 ④手術野の映像を共有できる ⑤低侵襲 の5つが挙げられます。
顕微鏡では見える視野が限られていますが、内視鏡は広い視野に少ない死角で手術をすることができます。見えていなかった、そこにあった構造物が新たに「発見」されるということも起こりました。
耳科手術のゴールは「低侵襲」「安全」「結果が予測できる」「機能的であること」と考えられます。では、耳科手術を安全・確実に行うためのコツとは何でしょうか。
技術発展のその時々で、過去の医師たちがそれぞれに「コツ」を述べてきました。
内視鏡の登場によって耳科手術は大きく変わりました。「内視鏡併用で、明視下に、安全確実に、操作する」こと、これが耳科手術における最新の「コツ」と言えるでしょう。
1997年にTEESが登場し、耳科手術はパラダイムシフトを迎えました。内視鏡で行う耳科手術が広がり、「外耳道経由で、視点を動かしながら、明視下に、安全確実に、操作する」という技術が不変的なものとなりました。
TEESの登場によって、低侵襲な治療が実現して患者の負担が軽減されただけでなく、術者である医師の負担も軽減されています。”Heads-up surgery”と呼ばれ、楽な姿勢で手術を行うことが可能となりました。
TEESの問題点として、①2Dであること ②片手操作になること ③末梢へのアクセスの難しさ ④狭い耳深部での施術 が挙げられますが、これらの問題点を克服する努力は日夜続けられています。
内視鏡の登場によって私たちは「人間の『眼』を超えた『眼』」を持つことは可能になりましたが、「人間の『手』を超えた『手』」はまだ現実のものではありません。
この点において、現在使われている手術ロボットがよりミニチュア化することで、耳科手術への応用が期待されます。
技術の応用を待つだけではなく、現在ある技術を発展させる、つまり「改善(KAIZEN)」することも重要です。
「どのように耳の深部へ到達するのか」という問題点については、Powerd TEESが一つの解決策となっています。
講演では、実際のPowerd TEESの手術ビデオを供覧しています。
P,T,A領域までの症例にはNon-Powerd TEESで対処し、それ以上の例ではPowerd TEESを適用しています。
Powerd TEESで用いる器具はエアロゾル発生源となると考えられています。ここからの感染を防ぐために、ガーゼで術野の一部を覆い、切れ目を入れてそこから内視鏡と手術機械を挿入しています。これだけでもエアロゾルの拡散を防ぐことができます。
さらに、山形大学で開発されたZAOSONiC®︎を使うことで、ほとんどエアロゾルの飛散無く手術することが可能になっています。
その他、Under-waterでの手術など、様々な感染予防対策が実施されています。
山形大学で行われているTEESの具体的な手技については、「TEES(経外耳道的内視鏡下耳科術)アトラス」という書籍で解説されています。
講演では、Heads-up SuegeryとしてのTEESについて紹介する動画が供覧されています。
「EES2022」では、内視鏡のみならず耳科手術に関わるイノベーション全て、さらに感音難聴の治療などについてもディスカッションが行われる予定です。