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胃がん治療のロボット手術 -Part2-


藤田医科大学病院 総合消化器外科 教授 宇山 一朗先生による「胃がん治療のロボット手術」のプレゼンテーションのPart2です。

【目次】
0:17~膵液瘻と予後(再発)について
0:59~藤田医科大学病院における、ロボット手術群と従来法群の術後合併症発生頻度に関する後ろ向きコホート研究について
5:52~da Vinci surgical system によるロボット支援手術の安全性、有効性、経済性に関する多施設共同前向き単群試験について

【概要文】
腹腔鏡手術は創が小さいため、長らく「低侵襲手術である」と言われてきました。
しかし近年は「創が小さい上に、術後の合併症の発症頻度が低い手術こそ低侵襲手術である」という考え方にシフトしています。

たしかに腹腔鏡手術は創が小さく、肉眼ではとらえられない病変を拡大視によってとらえることができるというメリットがあります。
その一方、局所操作性が悪い点がデメリットです。
こうしたデメリットにより、National Clinical Database(以下、NCD)には、早期がんでは腹腔鏡手術の方が開腹手術に比べて術後合併症の発症数が多かったという報告があげられています。


腹腔鏡手術の局所操作性の悪さを解消するのに一躍買うのが腹腔鏡手術支援ロボットda Vinci Surgical Systemです。
テクノロジーにより局所操作性を改善させることで、術者の習熟度に関わらず同じレベルでの治療が可能になると期待されています。


藤田医科大学病院で行った、ロボット手術群と従来法群の術後合併症発生頻度に関する後ろ向きコホート研究では、局所合併症の発症頻度はロボット手術群では有意に低いという結果が得られました。
この研究で、胃癌の術後合併症発症危険因子は、次のものが挙げられています。

・ロボット手術を行わないこと
・胃全摘
・D2リンパ節郭清

胃全摘とD2リンパ節郭清については患者さんの状態によって決まる因子であるため、医療者側が対応できる危険因子対策としては、ロボット手術を行うことであると言えます。


この研究結果をもとに、2014年9月に「da Vinci surgical system によるロボット支援手術の安全性、有効性、経済性に関する多施設共同前向き単群試験」が先進医療Bとして承認されました。
この臨床試験の結果、GradeⅢ以上の合併症発生率は2.45%と有意差が認められています。
一方、医療費に関しては180万円ほどかかっているため、経済的負担の問題は残るという結果になりました。


この臨床試験の結果を受け、2018年4月の診療報酬改定において、胃癌におけるロボット手術が保険収載となっています。
保険収載になったことで、患者さんは経済的負担が小さくなり、胃癌手術の歴史が変わっていくことが期待されます。


Part2ではロボット手術による胃癌手術の安全性、有効性を中心に解説いただきました。
今後医療現場に広く浸透する可能性が高いロボット手術について、理解が深まれば幸いです。
ぜひPart1とあわせてご覧ください。