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血管内イメージングで見る冠動脈硬化


菊名記念病院 循環器センター長 本江 純子先生によるプレゼンテーションになります。

【目次】
00:25~ 動脈硬化による心筋梗塞の発症
00:52~ 冠動脈造影の特徴
03:41~ 血管内エコーの特徴
06:42~ 冠動脈のリモデリング(代償性拡大)
08:36~ 虚血性心疾患におけるリモデリングパターンの特徴
09:07~ 代償性拡大の長期予後
09:31~ 代償性拡大の重要性
10:36~ IVUS(血管内エコー)が果たした役割
13:21~ 脂質低下療法
16:00~ PCSK9阻害薬の効果
16:57~ 日本での血管内イメージング

心臓は1日10万回拍動して、冠動脈によって栄養されます。コレステロールなどが血管壁にたまりプラークが形成されると、プラークの破綻によって血栓が形成されます。
これによって冠動脈が閉塞し、遠位部の心筋が壊死します。
心筋梗塞の診断・治療をするにあたっては、冠動脈造影が行われます。冠動脈造影の利点は、安価かつ正確で再現性があること、そして迅速で安全であることです。
ただし限界もあります。生理学的評価を考慮できないことや、参照部位が正常でない可能性があること、そして偏心性病変の正確な評価が難しいことなどが限界点として挙げられます。

血管内エコーの利点は、血管内径・内腔面積を正確に評価できることです。
また、0.5-0.9mm/secで自動的に引き抜きを行えるようになったため、断面積のみならず、血管、プラークの体積の計測も可能となりました。
病変の長軸方向の評価も可能です。

虚血性心疾患の多くでは、狭窄部位のみならず、広範にある程度の動脈硬化が存在することが指摘されています。この機序の一つとして考えられているのが、冠動脈のリモデリングです。「代償性拡大」とも呼ばれます。
リモデリングのパターンと患者に見られる症状はリンクしていると言われています。
例えば、急性心筋梗塞や不安定心筋症といった急性冠症候群の責任病変では、代償性拡大を呈するケースが多いということが分かっています。
また、リモデリングを責任病変で持っていたケースの長期予後を追っていくと、そうでないケースと比べて予後が不良であるという結果が報告されています。
したがって、代償性拡大の有無は治療を行う上で重要な指標となります。

冠動脈疾患の診断・治療において、IVUS(血管内エコー)の果たした役割は少なくありません。例えば、PCIの適応決定や作用メカニズムの解明、ステント留置後抗血小板療法の確立、PCI再狭窄のメカニズムの解明などが挙げられます。
あるトライアルでは、血管内エコーをガイドとしたステント治療と冠動脈造影をガイドとしたステント治療で予後を比べた時に、前者の方が有意に予後が良かったという結果が報告されています。

脂質低下療法は、スタチンを用いた動脈硬化の治療です。いくつかの研究では、IVUSを用いた血管の観察によりスタチンの有効性が示されています。
例えばアトロバスタチンを用いた研究では、血管全体の体積、プラークの量が持続的に減少したという報告があります。
動脈硬化性プラークの中で破綻しやすいケースでは、線維性被膜厚が薄いと言われていますが、ある研究では、スタチンの長期服用で線維性被膜が有意に厚くなったことが報告されています。線維性被膜が厚くなることでプラークが破綻しづらくなり、血栓の形成が抑制されるという機序です。
スタチン以外の薬剤として、PCSK阻害薬もコレステロール低下作用を持ちます。この薬の効果も、IVUSを用いた血管モニターによって示されています。

本邦は、各種の血管内イメージング(FFR、IVUS、血管内視鏡、OCT)が保険診療で認められている数少ない国の一つです。
IVUSやOCTは、カテーテルインターベンションの補助診断として汎用されており、長期予後の改善に寄与しているというデータがあります。
冠動脈疾患の再発防止のためには、至適な薬物療法が重要であるということが、血管内イメージングに関する研究から明らかになっています。