兵庫医科大学病院 消化器外科 臨床教授 池田 正孝先生による「がんと血栓症 一次予防と抗凝固薬治療」のプレゼンテーションです。
【目次】
0:16~肺血栓塞栓症の病態生理
4:09~がん患者におけるVTEの一次予防
13:39~新規経口抗凝固薬(DOACs)への期待
【概要文】
肺血栓塞栓症(PE)は、深部静脈血栓症(VTE)で発生した血栓が肺に移行することで発症する疾患です。
臨床症状はほとんどないことが多く、突然死の原因になることがあります。
深部静脈血栓症は症候性と無症候性がありますが、8割は無症候性であるため、治療よりも予防することが重要です。
血栓ができる原因はVirchowの3徴(血流のうっ滞、内皮細胞障害、凝固能異常)が古くから知られていました。
これとは別に、がん患者で血栓が起こりやすいということがわかり、Cancer-Assosiated Thrombosis(がん患者に関連して起こる血栓症, CAT)という名称がつけられています。
がん患者による凝固異常のメカニズムは次の4つです。
①腫瘍細胞が産生する組織因子TFが凝固外因系の第Ⅶ因子を活性化する。
②腫瘍組織から遊離したマイクロパーティクルmicroperticlesが凝固外因系を活性化する。
③腫瘍細胞が血小板を活性化する。
④腫瘍細胞が産生するサイトカインが内皮細胞を障害する。
がん患者は①高齢②臓器予備能低下③がんによる深部静脈血栓症の発生リスク増大という、元々肺血栓塞栓症を発症しやすい状態になっています。
この状態にさらに手術や化学療法をすることでより深部静脈血栓症の発症リスクは高まります。
現在化学療法による肺血栓塞栓症予防に対するガイドラインは発行されていません。
世界中から化学療法と肺血栓塞栓症に関する研究報告がなされており、これらを総括してのガイドラインの作成が望まれます。
他方、手術に対する肺血栓塞栓症予防ガイドラインは2004年に発行され、その後適宜改定されています。
最新のガイドラインでは、予防法として元々低リスクのみで推奨されていた「早期離床および積極的な運動」が全リスクで推奨に変更されました。
他にポイントとしては、中リスク以上では弾性ストッキングや間欠的空気圧迫(IPC)が予防法として挙げられています。
これらは禁忌の病態や合併症に注意して使用することが必要です。
さらにガイドラインでは薬物予防としてヘパリン類による方法と、直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants, DOACs)の一種である抗Ⅹa剤による方法が挙げられています。
DOACsは近年、血液の凝固線溶分野では大変注目されている薬剤で、トロンビンや第Ⅹ因子を阻害することで抗凝固能を発揮します。
ワルファリンのデメリットを補いつつ効果は劣らないという点から、今後の肺血栓塞栓症予防の一翼を担うと期待されています。
肺血栓塞栓症は予測が難しい一方、急な転帰を起こす可能性のある疾患です。
この動画が明日からの臨床の参考になれば幸いです。
【目次】
0:16~肺血栓塞栓症の病態生理
4:09~がん患者におけるVTEの一次予防
13:39~新規経口抗凝固薬(DOACs)への期待
【概要文】
肺血栓塞栓症(PE)は、深部静脈血栓症(VTE)で発生した血栓が肺に移行することで発症する疾患です。
臨床症状はほとんどないことが多く、突然死の原因になることがあります。
深部静脈血栓症は症候性と無症候性がありますが、8割は無症候性であるため、治療よりも予防することが重要です。
血栓ができる原因はVirchowの3徴(血流のうっ滞、内皮細胞障害、凝固能異常)が古くから知られていました。
これとは別に、がん患者で血栓が起こりやすいということがわかり、Cancer-Assosiated Thrombosis(がん患者に関連して起こる血栓症, CAT)という名称がつけられています。
がん患者による凝固異常のメカニズムは次の4つです。
①腫瘍細胞が産生する組織因子TFが凝固外因系の第Ⅶ因子を活性化する。
②腫瘍組織から遊離したマイクロパーティクルmicroperticlesが凝固外因系を活性化する。
③腫瘍細胞が血小板を活性化する。
④腫瘍細胞が産生するサイトカインが内皮細胞を障害する。
がん患者は①高齢②臓器予備能低下③がんによる深部静脈血栓症の発生リスク増大という、元々肺血栓塞栓症を発症しやすい状態になっています。
この状態にさらに手術や化学療法をすることでより深部静脈血栓症の発症リスクは高まります。
現在化学療法による肺血栓塞栓症予防に対するガイドラインは発行されていません。
世界中から化学療法と肺血栓塞栓症に関する研究報告がなされており、これらを総括してのガイドラインの作成が望まれます。
他方、手術に対する肺血栓塞栓症予防ガイドラインは2004年に発行され、その後適宜改定されています。
最新のガイドラインでは、予防法として元々低リスクのみで推奨されていた「早期離床および積極的な運動」が全リスクで推奨に変更されました。
他にポイントとしては、中リスク以上では弾性ストッキングや間欠的空気圧迫(IPC)が予防法として挙げられています。
これらは禁忌の病態や合併症に注意して使用することが必要です。
さらにガイドラインでは薬物予防としてヘパリン類による方法と、直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants, DOACs)の一種である抗Ⅹa剤による方法が挙げられています。
DOACsは近年、血液の凝固線溶分野では大変注目されている薬剤で、トロンビンや第Ⅹ因子を阻害することで抗凝固能を発揮します。
ワルファリンのデメリットを補いつつ効果は劣らないという点から、今後の肺血栓塞栓症予防の一翼を担うと期待されています。
肺血栓塞栓症は予測が難しい一方、急な転帰を起こす可能性のある疾患です。
この動画が明日からの臨床の参考になれば幸いです。