【目次】
00:11~ イントロ(ジェンナーの種痘、今日の内容)
01:17~ 天然痘と種痘について(人類唯一の予防による疾患の撲滅)
02:06~ 世界ポリオ根絶計画
02:44~ コロナワクチン接種状況
04:13~ 本邦のワクチン接種が遅れた要因
04:58~ 本邦におけるワクチン行政に影響を与えた事例
05:44~ COVID-19ワクチンの有効性
07:36~ 数理モデルから見た集団免疫の達成目標
08:25~ ワクチン開発史・開発技術の進歩
09:46~ 核酸ワクチンの作用機序と特徴
10:42~ mRNAワクチンの開発
12:02~ mRNAワクチンによる免疫応答
13:21~ COVID-19ワクチンの安全性(有害事象報告から)
15:39~ COVID-19ワクチンの開発状況
16:25~ 国産ワクチンの開発状況
17:26~ 後発ワクチン開発の課題
20:05~ 新ワクチンの提案
22:29~ 新興再興感染症のためのリポジトリの構築
【概要文】
天然痘は人類史上唯一、予防に成功し、撲滅した感染症です。1798年にJennerが実用化した種痘の予防接種から始まり、1980年に撲滅宣言が出されました。以降一例も報告されていません。
天然痘の次に、撲滅させることを目標としているのがポリオです。ポリオワクチン接種徹底により世界中全ての国と地域において伝播を終息させることを目標としています。
ワクチンという、「人為的に免疫力を付与する技術」が、感染症との戦いにおいて強力な武器であるということが歴史から学び取れます。
本邦でのコロナワクチン接種は欧米各国に大きく遅れをとっています。この状況は、様々な社会活動・経済活動の再開が遅れることを意味し、深刻な事実です。
この様な状況に陥った原因の一つとして、国産ワクチンが遅れたこともありますが、より根本的な部分の問題があります。
ここ30年ほど本邦では、感染症や疾病予防に対する施索が消極的であり、その環境において企業や研究者のワクチン開発が活発になるはずもなく、ワクチン開発の基盤技術から遅れをとっていることが、今日の状況を招いています。
さらにその根底には、国民のワクチンに対する不信感があります。「ワクチン反対論者」はどの時代・どの国にも存在しますが、本邦では近年それが顕著に思われます。様々な事例において科学的信用を示さずに報道を過熱させるマスコミの影響も大きいでしょう。
COVID-19ワクチンの治験では、いずれのメーカーのワクチンについても、非接種群に対して接種群で有意に感染が抑制されていることが明らかになっています。
実際の接種開始後のデータを見ても、接種数の増加に伴って新規感染者数は減少していることが分かります。
集団免疫の閾値がどの程度であるかは議論の余地のあるところですが、米国の場合は、40%前後で集団免疫が働いたと考えられています。
数理モデルから考えると、集団免疫の達成目標は50~70%となっていますが、罹患率や人口密度などの複数の因子を考慮して予測する必要があります。
ワクチン開発は、技術革新とともに進歩してきました。細胞培養技術の進歩は弱毒化技術の確立に、遺伝子工学の進歩はサブユニットワクチンの実用化につながっています。
また、遺伝子工学、タンパク工学のさらなる発展によって、新たな弱毒化技術や不活化技術が開発され、現在の核酸ワクチンの時代へとつながっています。
核酸ワクチンは、病原体の一部成分だけをつくる遺伝子を接種し、宿主細胞のタンパク合成機能を利用して抗原タンパクを作るという機序で設計されています。
現在COVID-19ワクチンとして日本で多く利用されているのは、mRNAワクチンです。
mRNAワクチンは新しい機序のワクチンですが、突然現れたものではなく、30年にわたる基礎研究の集大成です。
mRNAワクチンの設計においては、様々な構造について翻訳効率・安全性・免疫原性などを考慮し、その最適化がなされています。mRNAを運ぶための脂質粒子の構成も試行錯誤が繰り返されてきました。
mRNAワクチンではアジュバントを使用しませんが、mRNA自体に免疫賦活作用があります。強い免疫応答を誘導することが期待されており、強い副反応を起こす原因となっています。
国内では複数のメーカーのmRNAワクチンの臨床試験が実施され、その結果が報告されています。第1回接種後に比べて、第2回接種後に日常生活に支障のある症状の報告が多いとされています。高い頻度で副反応が見られるワクチンです。
様々な種類のワクチン開発が進行していますが、mRNAワクチンとサブユニットワクチンの開発が特に多く進んでいます。
国産のワクチン開発は各社臨床試験の第Ⅰ/Ⅱ相の段階で、第Ⅲ相まで進んでいるのは1つです。
後発ワクチンの開発は、先発の状況を見ながら進ることができます。しかし課題もあります。有効性の評価をどのように行うか、安全性プロファイルの改善、変異ウイルスへの対応、温度に対する安定性の改善などは大きな課題です。
国産ワクチンの実現に向けて、国立国際医療研究センターでは、新しいワクチンの開発を提案しています。
これは、短期間で多くの人口をカバーする量を用意できること(レプリコンワクチン)、安全で効果が高く、変異ウイルスへの対応が可能であること(第2世代ワクチン)をコンセプトとしています。
レプリコンワクチンは、動物実験において、高いIgG抗体価とACE2/RBD阻害活性を示しています。
この度のCOVID-19の感染拡大状況を鑑みて、複数の大学・研究機関によって「ナショナル・リポジトリ」が構築されました。これは新興再興感染症のためのリポジトリで、体系的に新興再興感染症の生体試料や臨床情報をタイムリーに研究者に届けることで、開発研究を促進する目的があります。長期的には後進となる研究者の育成も行なっていくことが求められています。
00:11~ イントロ(ジェンナーの種痘、今日の内容)
01:17~ 天然痘と種痘について(人類唯一の予防による疾患の撲滅)
02:06~ 世界ポリオ根絶計画
02:44~ コロナワクチン接種状況
04:13~ 本邦のワクチン接種が遅れた要因
04:58~ 本邦におけるワクチン行政に影響を与えた事例
05:44~ COVID-19ワクチンの有効性
07:36~ 数理モデルから見た集団免疫の達成目標
08:25~ ワクチン開発史・開発技術の進歩
09:46~ 核酸ワクチンの作用機序と特徴
10:42~ mRNAワクチンの開発
12:02~ mRNAワクチンによる免疫応答
13:21~ COVID-19ワクチンの安全性(有害事象報告から)
15:39~ COVID-19ワクチンの開発状況
16:25~ 国産ワクチンの開発状況
17:26~ 後発ワクチン開発の課題
20:05~ 新ワクチンの提案
22:29~ 新興再興感染症のためのリポジトリの構築
【概要文】
天然痘は人類史上唯一、予防に成功し、撲滅した感染症です。1798年にJennerが実用化した種痘の予防接種から始まり、1980年に撲滅宣言が出されました。以降一例も報告されていません。
天然痘の次に、撲滅させることを目標としているのがポリオです。ポリオワクチン接種徹底により世界中全ての国と地域において伝播を終息させることを目標としています。
ワクチンという、「人為的に免疫力を付与する技術」が、感染症との戦いにおいて強力な武器であるということが歴史から学び取れます。
本邦でのコロナワクチン接種は欧米各国に大きく遅れをとっています。この状況は、様々な社会活動・経済活動の再開が遅れることを意味し、深刻な事実です。
この様な状況に陥った原因の一つとして、国産ワクチンが遅れたこともありますが、より根本的な部分の問題があります。
ここ30年ほど本邦では、感染症や疾病予防に対する施索が消極的であり、その環境において企業や研究者のワクチン開発が活発になるはずもなく、ワクチン開発の基盤技術から遅れをとっていることが、今日の状況を招いています。
さらにその根底には、国民のワクチンに対する不信感があります。「ワクチン反対論者」はどの時代・どの国にも存在しますが、本邦では近年それが顕著に思われます。様々な事例において科学的信用を示さずに報道を過熱させるマスコミの影響も大きいでしょう。
COVID-19ワクチンの治験では、いずれのメーカーのワクチンについても、非接種群に対して接種群で有意に感染が抑制されていることが明らかになっています。
実際の接種開始後のデータを見ても、接種数の増加に伴って新規感染者数は減少していることが分かります。
集団免疫の閾値がどの程度であるかは議論の余地のあるところですが、米国の場合は、40%前後で集団免疫が働いたと考えられています。
数理モデルから考えると、集団免疫の達成目標は50~70%となっていますが、罹患率や人口密度などの複数の因子を考慮して予測する必要があります。
ワクチン開発は、技術革新とともに進歩してきました。細胞培養技術の進歩は弱毒化技術の確立に、遺伝子工学の進歩はサブユニットワクチンの実用化につながっています。
また、遺伝子工学、タンパク工学のさらなる発展によって、新たな弱毒化技術や不活化技術が開発され、現在の核酸ワクチンの時代へとつながっています。
核酸ワクチンは、病原体の一部成分だけをつくる遺伝子を接種し、宿主細胞のタンパク合成機能を利用して抗原タンパクを作るという機序で設計されています。
現在COVID-19ワクチンとして日本で多く利用されているのは、mRNAワクチンです。
mRNAワクチンは新しい機序のワクチンですが、突然現れたものではなく、30年にわたる基礎研究の集大成です。
mRNAワクチンの設計においては、様々な構造について翻訳効率・安全性・免疫原性などを考慮し、その最適化がなされています。mRNAを運ぶための脂質粒子の構成も試行錯誤が繰り返されてきました。
mRNAワクチンではアジュバントを使用しませんが、mRNA自体に免疫賦活作用があります。強い免疫応答を誘導することが期待されており、強い副反応を起こす原因となっています。
国内では複数のメーカーのmRNAワクチンの臨床試験が実施され、その結果が報告されています。第1回接種後に比べて、第2回接種後に日常生活に支障のある症状の報告が多いとされています。高い頻度で副反応が見られるワクチンです。
様々な種類のワクチン開発が進行していますが、mRNAワクチンとサブユニットワクチンの開発が特に多く進んでいます。
国産のワクチン開発は各社臨床試験の第Ⅰ/Ⅱ相の段階で、第Ⅲ相まで進んでいるのは1つです。
後発ワクチンの開発は、先発の状況を見ながら進ることができます。しかし課題もあります。有効性の評価をどのように行うか、安全性プロファイルの改善、変異ウイルスへの対応、温度に対する安定性の改善などは大きな課題です。
国産ワクチンの実現に向けて、国立国際医療研究センターでは、新しいワクチンの開発を提案しています。
これは、短期間で多くの人口をカバーする量を用意できること(レプリコンワクチン)、安全で効果が高く、変異ウイルスへの対応が可能であること(第2世代ワクチン)をコンセプトとしています。
レプリコンワクチンは、動物実験において、高いIgG抗体価とACE2/RBD阻害活性を示しています。
この度のCOVID-19の感染拡大状況を鑑みて、複数の大学・研究機関によって「ナショナル・リポジトリ」が構築されました。これは新興再興感染症のためのリポジトリで、体系的に新興再興感染症の生体試料や臨床情報をタイムリーに研究者に届けることで、開発研究を促進する目的があります。長期的には後進となる研究者の育成も行なっていくことが求められています。